OSSの「コントリビューション」を「貢献」とすることの呪縛

Added in version 2025.5.4.

少し前にBlueskyでふと思ったやつを、せっかくだしもう少し言語化してみたやつ。

「OSSへのContribution」という表現をするとき、contribution=貢献とするから気後れするのであって、contribution=寄稿にすれば気楽感は出るんじゃないかという思考。

kAZUYA kAKEI (@attakei.dev) 2025-05-01T12:45:54.441Z

OSSにおける「コントリビュート」の位置づけ

OSS [1] に対する関わり方には様々な形式がある。 もちろん「使う」事自体もそうだし、 「使っていることを発信する」ことや「必要に応じて改善をする」のもそうである。

少なくとも、現時点でこれを包括する表現として「OSSにコントリビュートする」という表現が使われる。

「コントリビュート」の和訳

「コントリビュート」という表現自体は英語の "contribute" をそのままカタカナにしたものではある。 では(いわゆる漢字表現としての)和訳はどうなるかというと、 ほとんど全てのケースにおいて「貢献」という表現が使われている。

もちろん、英和辞典的な意味で、この翻訳は一切間違っていない。 実際に多くの英和辞典でも「貢献する」は意味として含まれているし、上位に位置づけられている。 [2]

ただ、この「貢献する」という表現が、不必要な部分での萎縮を発生させていたりしないだろうか? とふと考えてみた。

「貢献」という日本語表現の意味するところ

名詞としての「貢献」には次のような意味がある。 [3]

  1. ある物事や社会のために役立つように尽力すること。「学界の発展に—する」「—度」

  2. 貢ぎ物を奉ること。また、その品物。

無理矢理に【OSS活動に躊躇する人格】を脳内で作って感想をひねり出すと、 「結果として発展に繋がらないといけない」「ある程度以上のエネルギーを使わないといけない」 という印象はまぁゼロではなさそうではある。

もちろんそんなことは全く無いのだが、 世間に一般で目に入る「貢献」という言葉が使われるときの語感としてはそこまで間違っていなかったりもする。 (「組織 貢献 」「社会 貢献 」などもこれに近い)

余談: 「貢」と「献」

漢字単体としての「貢」は年貢などに使われているように、「みつぐ」という意味合いとなる。 そして「献」は献上や献血のように、「あげる」という意味合いが強い。

総じて「OSSのために時間や労力を 捧げる 」という印象を持ってしまうのかもしれない。

「コントリビュート」に持たせたい感覚

ではコントリビュートという表現に対して、OSSの文脈ではどう捉えておくとよいのだろうか。 個人的には、辞書的意味から抜粋するなら「寄稿」ぐらいで良いと思っている。

このあたりの理由はきれいな言語化をできているわけではないのだが、 結果的に発展すれば良いとはいえ、「発展すること」を主に活動する必要はないためと言える。 特にコントリビュートの第3歩目ぐらいで登場する「ブログを書く」などは、 極端な話をすれば「少し未来の自分のため」ですら過分な理由であって、 それこそ衝動的であっても全く問題ない。 そういう意味も含めて、より主体的感のある「寄稿」を意識すると良いと思っている。 [4]

余談: Contributeを受ける側

GitHubなどに掲載されるような"OSS Contributors"という文脈では「貢献」のまま受け取って良いと思っている。 これは、どちらかというとContributeされた側の視点での書き方で「謝辞」の要素を含んでいると考えて良いため。

漢字表現をあえて使わない、という選択

結局のところ、日本語と英語の意味関係は「1対1」でも「1対多」でもなく「多対多」であることがこのあたりの要因ではある。 そういった意味でも、あえて最初から最後まで「コントリビュート」で通すことも悪くない選択肢ではある。

もちろん、その場合も障壁が高くなりにくいような表現で事前説明したいところだが。

注記